【読書ルーム(10) プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】

【『プロメテウス』第1章  プロメテウスの揺籃の地 4/27 〜 ハイゼンベルクの青年時代〜物理学を選択するまで】   作品の目次

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【あらすじ】

大学入学当初には数学と物理学の両方に関心があったヴェルナー・ハイゼンベルクアインシュタイン相対性理論の圧倒的な影響によって物理学を志すようになる。

 

【本文】

ヴェルナーの関心は数学と物理学の間を行きつ戻りつしたが、アインシュタイン相対性理論にヴェルナーはただならぬ魅力を覚えた。相対性理論に対するヴェルナーの関心はもちろん、当時の一般人が抱いていた疑問、すなわちキリスト教徒ではないユダヤ人がニュートン力学を修正するなどということがありうるのか否かなどといった狭い見地からではなく、純粋に学問的な動機に根ざしていた。ヴェルナーは相対性理論を表現する言葉とも言えるリーマン幾何学なども容易に習得した。


大学に入学してしばらくの間、ヴェルナーは確かに数学を志していた。しかし、個人教授を請うために父の勧めで著名な数学者リンデマンの自宅に赴いて書斎で面談した際、書斎にいた飼い犬が激しく吠え立て、さらには今までに昧読した数学の本の題名を聞かれたヴェルナーが、リンデマンが密かに嫌っていた、数学と自然科学の他分野の橋渡しを試みるワイルの著作を挙げたことから、リンデマンはヴェルナー自身の数学に対する関心が純粋な記号体系にあるのではなく、応用を常に視野に入れて数学を学ぼうとしていると指摘した。リンデマンとの面接の後、ヴェルナーは純粋な数学から遠ざかった。折りしもミュンヘン大学の物理学の重鎮であるゾマーフェルト教授が四学期、二年間を一周期としていた初級から中級に至る物理学の一連の授業が最初から開始され、ヴェルナーはゾマーフェルト教授の授業を順を追って受講することができた。こうしてヴェルナーの進路は決まった。ゾマーフェルト教授のもとでヴェルナー・ハイゼンベルクオーストリア人の早熟の天才ヴォルブガング・パウリと知り合った。パウリはヴェルナーよりも一歳年上の二十歳ですでにアインシュタイン相対性理論を完全に理解していた。


一九二一年、スエーデン王立アカデミーに対する八回に渡る推挙と王立アカデミーによる拒絶を経てアインシュタインが終にノーベル物理学賞を受賞したが、王立アカデミーによる受賞理由は相対性理論ではなく、アインシュタインの業績の中では独創性や意外性に乏しい光電効果だった。アインシュタインは日本に向かう客船の上で、船が途中の港に寄港した際にノーベル賞受賞を知らせる電報に接した。

(読書ルーム(11) に続く)

 

【解説】

スェーデン王立アカデミーがアインシュタイン相対性理論以外の功績でノーベル物理学賞の授与を決定したのはとにかくアインシュタインストックホルムに招いて相対性理論についての質疑応答を試みたいと考えたからのようである。アインシュタイン自身もスェーデン王立アカデミーの意図を汲んだのか、受賞記念講演で相対性理論の解説を行った。

 

【参考】

ヴォルブガング・パウリ (ウィキペディア)

 

リーマン幾何学 (ウィキペディア)

 

 

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