「オッペンハイマー」を見てきました。

「みんなのシネマレビュー」に寄せたわたしのレビュー トップバッターと2番手の方々に補足して感想と鑑賞の心得をかかせていただきます。 まず、英語圏では今までに千冊を超える原子力・原子爆弾開発関連の書籍が発刊されていてそれはあたかも日本で戦国時…

「オッペンハイマー」 に期待するもの その3

次にローレンスですがこの人の科学史上の最大の功績は放射線医療の確立だとわたしは思うのですが、天然ウラニウムの0.7%を占めるウラニウム235の分離(いわゆる濃縮)にも多大な貢献があります。この人のノーベル賞受賞理由は量子加速装置、いわゆるサイクロト…

「オッペンハイマー」 に期待するもの その2

みんなのシネなレビュー(jtnews.up)に掲載された「オッペンハイマー」の配役を見ているうちにまた少し付け足したくなったので書くことにしました。女性の登場人物が少ないのはこの時期に活躍した女性科学者のうちドイツで化学者オットー・ハーンと協力して核…

「オッペンハイマー」 に期待するもの その1

「ゴジラ ー0.1」のコメントで科学者四巨頭の名前を出しましたが4人の中でフェルミとコンプトンを演じた俳優の名前が上記の「みんなのシネマレビュー」の「オッペンハイマー」のページにもIMDBの同作品のページにも掲載されていないのですね。ということはこ…

「ゴジラー0.1」と「オッペンハイマー」 

先週末に「ゴジラー0.1」を見てきました。本来「ゴジラー0.1」の感想は本来わたしの映画評ブログに書き込むべきですが中でオッペンハイマーに言及している箇所があるのでこちらとのダブル掲載とし、さらに3月29日日本公開予定で本年のアカデミー賞受賞作「オ…

祝 「オッペンハイマー」受賞

複数のノーベル賞受賞者部会に従えて科学技術の水準に於いて世界に冠たる国家であると信じられていたナチスドイツの原子力利用と核兵器開発に成功する可能性に怯えながらロスアラモス研究所と全米に点在した基礎技術と関連技術の開発拠点で仕事に従事した何…

NHKスペシャル

「死の商人」だったかもしれないベルギー人サンジェについての番組を見ました。番組で欠けていた視点はサンジェの故国ベルギーが、少なくともサンジェがウラン販売で利益を挙げた時点においては、ナチスドイツに侵攻されてひとたまりもなく白旗を掲げるしか…

「プロメテウス達よ」電子版について

前のエントリーでは電子版発刊が遅々として進まないことからの言い訳からもかなり逸脱してしまいましたが、その間わたしはウクライナ情勢を見守りながら岸田政権がいつになったら原発の再稼働にGo サインを出すのを今か今かと待っていましたが5月23日現在、…

「プロメテウス達よ」で意図したこと

本作品の電子出版の準備ということで長らくブログの更新をサボっていました。編集の仕事というものはつくづく厄介なものです。特に自分の書いたものの誤字脱字を修正するためには完全に自分自身を返上して小難しく厳しい目を自分の苦心作に注がなくてはなら…

【読書ルーム プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】

明けましておめでとうございます。 昨年8月15日、終戦の日に開始し、9月2日にUSBメモリに保存してある本体分のブログへのアップロードを終えた本作品の行方については既にアマゾンからの電子出版を計画していることをお伝えしています。些末時で忙しく…

【『プロメテウス達よ ー ××××】タイトルの由来

作品目次 【『プロメテウス達よ』前書き】 オットー・ハーンを作品の"トリ "に選んだ理由 (エピローグの前書き…ウェブ限定) わたしが原子力開発関連の本を執筆していてその書名は暫定的に「プロメテウス達よ」に決めていると言った時に「そのタイトルは⋯。」…

【『プロメテウス達よ』前書き】

科学上の仕事は砂上の家のような征服者の栄華の夢とは比較ができない。 寺田寅彦(一八七八年 ~ 一九三五年)「相対性原理側面観」より 前言 紙も筆もない、文字もなく言語さえも今とは比べ物にならないほど稚拙だったと思われる太古の昔に、世界各地に存在…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて】

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」7/7 この正真正銘の原子番号九十三番の超ウラニウム元素はベータ線を発するので、それは超ウラニウム元素よりもさらに原子番号の高い原子番号九十四番の元素に変化し…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて】

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」6/7 物理と化学の両分野において研究は非常に早い速度で進展しました。ウラニウムからバリウムが生じたことを報告する論文を発表してからたった一年後にはL. A. タ…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて】

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」5/ 7 当初観察された放射能と放射性ランタニウムの生成による量の増大は両方のサンプルで観測誤差を考慮した場合同じでしたが、多種のバリウム塩の結晶化によって担体…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて】

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」4/ 7 この物質の分離は硫化バリウムを分離する方法ではなく、バリウム沈殿物を分離する方法で行われましたが、その方法によると表面に他の物質が吸着されます。しかし…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」3/7 リーゼ・マイトナーと私は、この十三分の寿命しかない元素がプロタクティウムの同位体であるのかどうかをつきとめるためフェルミの実験を繰り返すことにしました…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで(オットー・ハーンのノーベル賞受賞講演)」2/7 一九三二年には陽電子、重水素、そして最も重要なこととして中性子が発見されました。中性子は三つの国でなされた探査の結果として発見されました。最初にその存…

【『プロメテウス達よ』エピローグに代えて

「天然ウラニウム崩壊の発見から人工核分裂まで」1/7オットー・ハーン一九四六年十二月十三日ノーベル賞受賞記念講演 (注:この講演の版権はノーベル財団にあり、原文を翻訳するに当たり同財団からの許可はいただいておらず、また英文からの翻訳の正確性を…

プロメテウス達よ 〜 エピローグに代えて

エピローグの前書き (ウェブ限定) 作品の目次 本作品の目次を既にご覧になった方ならご存じでしょうが、当初筆者であるわたしは本ウェブ版の「プロメテウス達よ」は第六章の「冷戦」で完結させるつもりでした。その理由は、わたしが知る限り、この段階(原子…

プロメテウス達よ 〜 ここからどこへ?

作品目次 編集が済み次第、アマゾンから電子出版します。出来れば今年中に本ブログで発表した本作品ともう一つの作品の発表を完了したいと思います。わたしがこの二作品の全文を公開した意図の根底にはある強いこだわりがあります。それは英米を中心として始…

プロメテウス達よ (付記 - 参考文献)

参考文献 (アルファベット順) 作品の目次 文献一覧(著者名アルファベット順)Bird, Kay, Sherwin, Martin “American Prometheus, The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer”Cassidy, David C. “Uncertainty ~ Life and Science of Heisenberg”Comp…

プロメテウス達よ (付記 - 科学者の名簿)

プロメテウスの名簿(五十音順 科学者のみ)本文中のリンク先はウィキペディアです。 作品の目次 アインシュタイン、アルバート (1879 - 1955) 国籍:ドイツ→スイス→オーストリア→ドイツ→アメリカ。1912年に特殊相対性理論を発表。1921 年に光電効果によって…

プロメテウス達よ (付記6)

第六章「冷戦」で活躍するプロメテウス達/第六章の参考文献 作品の目次 第六章 トップ ヴェルナー・ハイゼンベルク、マックス・フォン・ラウエ、オットー・ハーン、ウォルター・ゲルラハ、パウル・ハーテック、クルト・ディーブナー、カール・フリードリッ…

プロメテウス達よ (付記5)

第五章「マンハッタン計画(下)」で活躍するプロメテウス達/第五章の参考文献 作品の目次 第五章_トップ オッペンハイマー、コンプトン、フェルミ、ローレンスはドイツの降伏の二日後に召集されて完成間近の原子爆弾の使用法に関して科学者としての意見を聴…

プロメテウス達よ (付記4)

第四章「マンハッタン計画(上)」で活躍するプロメテウス達/第四章の参考文献 作品の目次 第四章 トップ 名門士官学校であるウエストポイントの卒業生で技術系の修士号も持つレスリー・グローブス准将を総司令官とするマンハッタン計画が開始され、ロハート…

プロメテウス達よ (付記3)

第三章「プロメテウスの目覚め」で活躍するプロメテウス達/第三章の参考文献 作品の目次 第三章_トップ ニールス・ボーアは原子核の中に封じられているエネルギーを解放することができるとオットー・フリッシュ経由でリーゼ・マイトナーから告げられ、それ…

プロメテウス達よ (付記2)

第二章「新時代の錬金術師たち」で活躍するプロメテウス達/第二章の参考文献 作品の目次 第二章_トップ ハンガリー生まれのユダヤ人物理学者レオ・シラードはナチスに席巻されたドイツを見限り、ベルリンからオーストリアに、さらにはラザフォードを頼って…

プロメテウス達よ (付記1)

第一章 「プロメテウスの揺籃の地」で活躍するプロメテウス達/第一章の参考文献 作品の目次 第一章 トップ 少年だったヴェルナー・ハイゼンベルクは第一次世界大戦でのドイツの敗北に感化され、学問を究めるきことによってドイツの文化復興に寄与しようと心…

プロメテウス達よ (付記0)

プロローグで活躍するプロメテウス達/プロローグの参考文献 作品の目次 プロローグ トップ アルバート・アインシュタインは彼にとって奇跡の年と言われる一九一二年に相対性理論を発表したが、その一貫として質量のある物体が莫大なエネルギーを内部に秘め…