【読書ルーム(21) プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】

【 『プロメテウス』第1章  プロメテウスの揺籃の地 15/27. 〜 ハイゼンベルクの青年時代〜 当時のアインシュタイン  作品の目次

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【本文】

一般相対性理論を完成させたアインシュタインはその頃、学生時代からのは念願だったニュートン力学に代表される力学体系とマックスウェルの電磁場の理論の統合に着手していた。それまでは広大無辺の宇宙にばかり想いを馳せていたアインシュタインは、今回は原子やその内部などの極小の世界に目を向けた。ベルリン大学のマックス・プランクが創設した量子力学にはすでに多くの追随者や更なる解釈をほどこす理論物理学者が現れていたが、ゲッチンゲン大学の夏期講座で若いヴェルナー・ハイゼンベルクと知り合って年齢を越えた親交を結んだデンマーク人のニールス・ボーア、そしてハイゼンベルクがゾマーフェルト教授に代って師事することになったゲッチンゲン大学のマックス・ボルンがその筆頭だった。アインシュタインはマックス・ボルンとは若い頃から親交を結んでいたが、そのボルンはハイゼンベルクがゲッチンゲンに来た際、「ミュンヘン大学のゾマーフェルト教授から金髪の純朴な学生を預かることになった。とても頭が良くてピアノが上手だ。」とアインシュタインに語った。それからわずか数年後に、旧来の友だったアインシュタインとボルンの間柄のみならず、学会を二分することになる一大論争にこの「ピアノが上手な金髪の学生」が深く関わるとその頃に予想した物理学者は誰もいなかった。

 

アインシュタインはすでに一般相対性理論の構築に忙しかった一九一二年に「量子力学は精緻化されればされるほど間抜けに見えていく。」とこぼしていた。アインシュタインは確かに極小の世界中にのめり込み数学を駆使して理論の精緻化に励む理論物理学者らとは一線を画していた。アインシュタインには極小の世界にのめり込むよりも広大な宇宙に想いを巡らすことのほうが性に合っていたのであろう。しかし、アインシュタインと他の物理学者たちを分けたのは考察の対象だけではなかった。

 

「人生は自転車操業。進むためには足を動かし続けなければならない。」とアインシュタインは言い、平和の使者やシオニズム運動の提唱者として講演や旅行へと世界中を飛び回った。その一方で、相対性理論を構築した時とは異なり、今や古典力学では別個に扱われていた運動力学と電磁力学を統一する場の理論の構築という大きな目標に挑むアインシュタインは旅行途上の汽車の中や船の上など、一人きりになれる時にはいつでも自らの考えを発展させることに余念がなかった。

(読書ルーム(22) に続く)

 

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