NHKスペシャル

死の商人」だったかもしれないベルギー人サンジェについての番組を見ました。番組で欠けていた視点はサンジェの故国ベルギーが、少なくともサンジェがウラン販売で利益を挙げた時点においては、ナチスドイツに侵攻されてひとたまりもなく白旗を掲げるしかなかった小国でサンジェの行動の動機にアメリカによる庇護をなんとか得たいという愛国心があったことを無視することができないということです。また、ナチスドイツがミサイル開発に注力し、核開発に回す予算が取れなかったというまことしやかな否定不可能な当てずっぽうも問題でした。事実は、ハイゼンベルクやハーンといった優秀なドイツの科学者らは核兵器開発の可能性をナチス政府に黙っていたのです。一方で彼らは原子力発電を成功させようという意欲と野心は充分に持っていました。まあ彼らが核兵器開発の可能性について口をつぐんだ理由はひとつにはヒトラーのような気狂いに新たな強力なハモノを持たせてはいけないということ以外にウランの中にたった0・7%しか含まれず化学的に分離することが出来ないウラニウム235の分離が実際的ではないという思いもあったでしょう。但し、ドイツはウランを手に入れるためにコンゴに貨物船を送る必要はなく、ドイツ占領下のチェコスロバキアにウラン含有量が十分高いウラン鉱山がありました。こういった事実も複合的に捉えられておらず、ドイツ降伏の過程も端折られて短絡的に日本が標的にされていた感が否めませんでした。