【読書ルーム(31) プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】

【 『プロメテウス』第1章  プロメテウスの揺籃の地 25/27 〜 ハイゼンベルクの青年時代〜アインシュタインの猛攻】  作品の目次

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【本文】

ハイゼンベルクの理論はアインシュタインには科学に取り組む姿勢に対する挑戦にさえ見えた。ニュートン力学を刷新する相対性理論を打ち立てたとは言え、アインシュタインは宇宙の創造者、すなわち神が自然の中に啓示した法則を読み取ることが科学者の使命であるという点においてガリレオからニュートン、マックスウェルに至る古典物理学の巨人たちと自分とは全く姿勢を同じくすると考えていた。しかし、若いハイゼンベルクの理論はまるで「神が決定できないものをわれわれ人間が確実に知ることはできない。」と唱える科学における異端の主張のようにアインシュタインには思えた。要因が複雑すぎる事象を確率的に説明する考え方ともハイゼンベルクの理論は異なっていた。ハイゼンベルクの理論はガリレオニュートン古典力学からアインシュタインに至るまでの決定論に対する挑戦だった。ハイゼンベルクによる自然界の不確定性の主張が、客観性を基調とする科学姿勢の放棄に繋がるわけではないことをコペンハーゲン学派が明示するまでは不確定性理論に対する攻撃の手を決して緩めないことをアインシュタインは心に決めていた。

 

ハイゼンベルクの理論に対してアインシュタインが唱えた異議に対してはまず、アインシュタインと長年親交のあったマックス・ボルンが、教え子のハイゼンベルクの理論を擁護した。ニールス・ボーアもすぐにマックス・ボルンに続いた。ニールス・ボーアハイゼンベルクの不確定性理論が含む意味を言葉を替えて説明した。

 

「すなわち、観測される事象というものは観測のしかたによって変わるのです。」

アインシュタインは納得しなかった。コペンハーゲンとゲッチンゲンで学んだ多くの物理学者がボーアの陣営についたのに対し、物質の両面性を説明したフランス人のド・ブロイと画期的な物質の波動方程式を導いたオーストリア人のシュレジンガーなど、人数は限られていたが優秀な物理学者がアインシュタインの考え方を強力に支持した。

(読書ルーム(32)  に続く)

 

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