【読書ルーム(16) プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】

【『プロメテウス』第1章  プロメテウスの揺籃の地 10/27. 〜 ハイゼンベルクの青年時代〜 隆盛を極めるドイツの学府(3)】  作品の目次

この記事の内容全ての著作権はかわまりに帰属します。  

 

【本文】

物理学を専攻しながら多方面にも才能を発揮した人物は、音楽でのアインシュタインハイゼンベルク、スポーツでのボーアやフェルミ、語学でのハウシュミット、文学でのオッペンハイマーなど枚挙にいとまがないが、国籍や文化・宗教の違いを越え、共に物理学を専攻しながら別分野で培われた友情もあった。

ハンガリーの裕福なユダヤ人家庭出身のエドワード・テラーと生粋のドイツ人で代々に渡って政治家を輩出してきたドイツ貴族の名門出身のカール・フリードリッヒ・フォン・ワイゼッカーの二人がそうだった。二人は物理学に明け暮れる学生生活の傍ら、気分転換にカフェなどで出会って詩集や哲学書を共に読み、意見を交換し合った。休日には二人で登山を楽しむこともあった。平和な世の中であれば二人の交友関係は一生の間続いたであろう。しかし個人的な理由なくして二人は別の道を歩まなければならなかった。二人はともにゲッチンゲンとコペンハーゲンの二箇所で物理学者としての修養を積んだが、ドイツでナチスによるユダヤ人迫害が始まった後、テラーはソビエトからアメリカに渡った数学者ガモフに誘われてアメリカに渡り、首都ワシントンDCでジョージ・ワシントン大学の教授の地位に就いた。その後テラーが友人としての資質を見出したのは、自分と同じ裕福なユダヤ人家庭出身でゲッチンゲン大学理論物理学を学び、アメリカへの帰国後にカリフォルニア州立大学バークレー校で教職を得たオッペンハイマーだった。オッペンハイマーは物理学のみならず詩や哲学や音楽に対する興味をも共にする友人としてフォン・ワイゼッカーの代わりとしてなんらの不足もなく、第二次世界大戦中テラーは公私ともにオッペンハイマーの側近としてアメリカでの原子力開発プロジェクトにおいて様々な役割を果たすことになる。そして、一方のフォン・ワイゼッカーはハイゼンベルクの片腕としてドイツ原子力開発プロジェクトにおいてなくてはならない役割を担うことになるのである。

 

ゲッチンゲン大学に集ったこれらの若者たちは後に科学への貢献を通じて人類の発展に寄与することになるのであるが、一九二十年代の前半、いまだ自らの運命やこれから与えられることになる使命については知る由もなく、それぞれが当面の学問の課題に一心不乱に取り組んでいた。

(読書ルーム(17) に続く)

 

【参考】

エドワード・テラー (ウィキペディア)

 

カール・フリードリッヒ・フォン・ワイゼッカー (ウィキペディア) →  第六章 冷戦 〜 エプシロン計画

 

 

【お知らせ】

下の画像は作りかけの本作品電子版の表紙です。出版社はお任せ出版社のアマゾン(Amazon International Services)です。ということは今のところアマゾン専用の電子ブックリーダーのキンドルのみで講読が可能だということです。こちらはそれほど高額ではありませんが有料となります。キンドル版には次のような優れた点があります。

・ 縦書き表示であること

・ 文字の大きさを変えられ、また字体を変えたり太字にしたりできること

さらにキンドルは数百冊以上の書籍を入れることができ、重量は文庫本並みです。アマゾンはお任せ出版社なので内容や誤字脱字などには自分で責任を持たないといけませんが精一杯努力する所存です。(予想価格:700円 要キンドル)

 

f:id:kawamari7:20211231165520j:image